着陸後、ターミナルまでランプ内専用のワゴン車両で移動しながら周囲を見渡すと、確かにターミナルビルなどの建物はすべて平屋で、周囲の緑濃い木々の枝葉に埋もれている。文字どおりの自然との調和がとても印象的だ。空港全体にも南国特有の開放感や自由さが感じられると同時に、押し付けがましくないデザインの統一感がある。木材を多用する空港施設にはほとんど壁や窓がなく、ほぼすべての設備がオープンエアになっている。聞くところによるとガラスドアがきっちり閉ざされているのはエアコンを激しく使うアイスクリームショップと高級志向のギフトショップだけ、とのこと(最近は、搭乗待合室の一つに空調が導入されたそうだだが)。まぎれもなく風通しが良い空港、と言うことになるだろうか。働いているさまざまな職種のスタッフ(実際の所属会社は多岐にわたる)のユニフォームもほぼブルーを基調にしたデザインであることに気づく。空港全体としての統一感を整えていると思えてならない。そう、ここには東南アジアの地方空港らしからぬ、高級リゾート施設のようなスタイリッシュさがあるのだ。これが客室乗務員の言う「スマート」ということなのか。

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さらに空港内の探索を続けたいところだが、取りあえず到着ターミナルから空港の外に出てみる。なんと言ってもここは南国の島、土地の生の空気も直に感じてみたいからだ。空港周辺は島随一の市街地となっているが、表通りを含めタイののどかな田舎町といった風情である。制服で通勤する空港勤務者を含む島民たちが帽子とサングラスや日傘などを身に付けて、のんびりと通りを移動している。すぐ近くのビーチ沿いのエリアには高級リゾートホテルや別荘などが連なっている。空港は島北部の海岸に近いため、いくつかのビーチからは滑走路に発着する航空機を間近に見渡せる。飛行機好きにはなかなかオイシイ島かもしれない。手付かずの海岸エリアもあるので、好きなアングルで自分だけのスポットを探すのも楽しそうだ。

島には舗装された周回道路がある。車で一周回っても2時間弱ほど。島内各所に見どころとされるスポットが点在するが、どれも規模は比較的小さい。それより島全体を覆うほぼ手付かず自然と、南の島に穏やかに暮らす人々、そしてゆったりと流れる時間がなによりのサムイの魅力だ。ビーチやマリンスポーツ、トレッキングなども各所で自在に楽しめるほか、中心部にはモダンなショッピングモールやタイ独特の雑多な商業飲食エリア、そしてナイトライフゾーンもあり何でも揃う。ここは訪れる人ががっかりしない、いい具合に成熟した熱帯のリゾートアイランドなのである。実際、島内各所で長期バカンス中(あるいは「沈没」中)の欧米からの旅行者に出会う。彼らのように島の中心部を離れて数週間、数ヶ月滞在のんびりと時間を過ごすことを想像しつつ、取りあえず私は近場の散策である。多くの旅行者はあえて足を伸ばさないであろう、空港周辺エリアを足早にそしてディープに回ってみることにする。

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島の最北部の近くを走る道路から裏通りを3本ほど入ると、空港敷地の北端のエリアに出た。空港敷地の限界を示すフェンスと滑走路の端がすぐそこに見える。質素な保安ゲートがあり、その先の敷地内には滑走路の端のすぐ外側を回りこむように未舗装の道路が続いていて、一般のバイクやクルマなどが堂々と空港敷地内を横切っている。ここは滑走路横断のショートカットなのだ。しかし緊張感はまるでない。さすがに航空機がアプローチするときには一応ゲートの遮断バーが閉まり、通行が止められるが。それ以外は完全開放である。それではとゲートの中に進み、滑走路の端からほんの数メートルの、航路の真下にあたる位置に立ってみる。なかなかの迫力である。すると航空機のエンジン音が遠くに聞こえる頃に係員がのんびりとやってきて、「着陸だよー。移動してね」と告げてゲートの外まで誘導してくれる。ゲートの外と言っても竿竹製の遮断バーが一本あるだけである。必要な保安基準はきちんと順守しながらも、原理原則の規則で縛り付けるだけではない「サムイ式」の寛容さを好きならずにいられない。

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そのショートカット道路を通り抜けて空港ターミナルに戻ってみる。改めて施設を眺めると、搭乗手続きカウンターのある建物から出発ゲートのある建物までの通路は屋外であることが分かる。熱帯の樹木に覆われつつも手入れが行き届いたオープンエアのコンコースが、100メール近く続いている。途中、木々の間にギフトショップやレストランなどが見える。その雰囲気はまるで、オフシーズンの郊外のアウトレットモールや野外美術館のようである。こんな空港は他にあるだろうか。ここは豪華さではなく、土地にマッチしたデザイン性・快適性を追求しているのだ。画一的な「空港」の標準設計からは決して生まれないこの自由さとオリジナリティこそ、「私有空港」の最大の特徴だろう。施設の外見だけでなく、空港内に「何をしているかよく分からない役人風の職員」の類が極めて少ないことも印象的だ。民間企業が当たり前に独自の事業として運営すると空港はこうなる、という見本かもしれない。

着陸後、ターミナルまでランプ内専用のワゴン車両で移動しながら周囲を見渡すと、確かにターミナルビルなどの建物はすべて平屋で、周囲の緑濃い木々の枝葉に埋もれている。文字どおりの自然との調和がとても印象的だ。空港全体にも南国特有の開放感や自由さが感じられると同時に、押し付けがましくないデザインの統一感がある。木材を多用する空港施設にはほとんど壁や窓がなく、ほぼすべての設備がオープンエアになっている。聞くところによるとガラスドアがきっちり閉ざされているのはエアコンを激しく使うアイスクリームショップと高級志向のギフトショップだけ、とのこと(最近は、搭乗待合室の一つに空調が導入されたそうだだが)。まぎれもなく風通しが良い空港、と言うことになるだろうか。働いているさまざまな職種のスタッフ(実際の所属会社は多岐にわたる)のユニフォームもほぼブルーを基調にしたデザインであることに気づく。空港全体としての統一感を整えていると思えてならない。そう、ここには東南アジアの地方空港らしからぬ、高級リゾート施設のようなスタイリッシュさがあるのだ。これが客室乗務員の言う「スマート」ということなのか。

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さらに空港内の探索を続けたいところだが、取りあえず到着ターミナルから空港の外に出てみる。なんと言ってもここは南国の島、土地の生の空気も直に感じてみたいからだ。空港周辺は島随一の市街地となっているが、表通りを含めタイののどかな田舎町といった風情である。制服で通勤する空港勤務者を含む島民たちが帽子とサングラスや日傘などを身に付けて、のんびりと通りを移動している。すぐ近くのビーチ沿いのエリアには高級リゾートホテルや別荘などが連なっている。空港は島北部の海岸に近いため、いくつかのビーチからは滑走路に発着する航空機を間近に見渡せる。飛行機好きにはなかなかオイシイ島かもしれない。手付かずの海岸エリアもあるので、好きなアングルで自分だけのスポットを探すのも楽しそうだ。

島には舗装された周回道路がある。車で一周回っても2時間弱ほど。島内各所に見どころとされるスポットが点在するが、どれも規模は比較的小さい。それより島全体を覆うほぼ手付かず自然と、南の島に穏やかに暮らす人々、そしてゆったりと流れる時間がなによりのサムイの魅力だ。ビーチやマリンスポーツ、トレッキングなども各所で自在に楽しめるほか、中心部にはモダンなショッピングモールやタイ独特の雑多な商業飲食エリア、そしてナイトライフゾーンもあり何でも揃う。ここは訪れる人ががっかりしない、いい具合に成熟した熱帯のリゾートアイランドなのである。実際、島内各所で長期バカンス中(あるいは「沈没」中)の欧米からの旅行者に出会う。彼らのように島の中心部を離れて数週間、数ヶ月滞在のんびりと時間を過ごすことを想像しつつ、取りあえず私は近場の散策である。多くの旅行者はあえて足を伸ばさないであろう、空港周辺エリアを足早にそしてディープに回ってみることにする。

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島の最北部の近くを走る道路から裏通りを3本ほど入ると、空港敷地の北端のエリアに出た。空港敷地の限界を示すフェンスと滑走路の端がすぐそこに見える。質素な保安ゲートがあり、その先の敷地内には滑走路の端のすぐ外側を回りこむように未舗装の道路が続いていて、一般のバイクやクルマなどが堂々と空港敷地内を横切っている。ここは滑走路横断のショートカットなのだ。しかし緊張感はまるでない。さすがに航空機がアプローチするときには一応ゲートの遮断バーが閉まり、通行が止められるが。それ以外は完全開放である。それではとゲートの中に進み、滑走路の端からほんの数メートルの、航路の真下にあたる位置に立ってみる。なかなかの迫力である。すると航空機のエンジン音が遠くに聞こえる頃に係員がのんびりとやってきて、「着陸だよー。移動してね」と告げてゲートの外まで誘導してくれる。ゲートの外と言っても竿竹製の遮断バーが一本あるだけである。必要な保安基準はきちんと順守しながらも、原理原則の規則で縛り付けるだけではない「サムイ式」の寛容さを好きならずにいられない。

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そのショートカット道路を通り抜けて空港ターミナルに戻ってみる。改めて施設を眺めると、搭乗手続きカウンターのある建物から出発ゲートのある建物までの通路は屋外であることが分かる。熱帯の樹木に覆われつつも手入れが行き届いたオープンエアのコンコースが、100メール近く続いている。途中、木々の間にギフトショップやレストランなどが見える。その雰囲気はまるで、オフシーズンの郊外のアウトレットモールや野外美術館のようである。こんな空港は他にあるだろうか。ここは豪華さではなく、土地にマッチしたデザイン性・快適性を追求しているのだ。画一的な「空港」の標準設計からは決して生まれないこの自由さとオリジナリティこそ、「私有空港」の最大の特徴だろう。施設の外見だけでなく、空港内に「何をしているかよく分からない役人風の職員」の類が極めて少ないことも印象的だ。民間企業が当たり前に独自の事業として運営すると空港はこうなる、という見本かもしれない。