キューバと言えば、日本人的にはチェ・ゲバラ、野球、クラシックカー、ブエナビスタ・ソシアル・クラブ…だろうか。
カリブ海に浮かぶ社会主義国家キューバ共和国。
私が最初にこの国に興味を抱いたのは、ロンドンのJazz Cafe (http://thejazzcafelondon.com/) でキューバ人Jazzピアニスト、Robert Fonseca (http://www.robertofonseca.com/en) のライブをたまたま観たのが始まりだった。JazzなんだけどJazzだけじゃない、サルサも入っているけどそれだけじゃない、今まで聴いたことのない音階、リズム。あまりのcoolさに血が騒いで叫びたくなるほどだった、いや、ほんとに叫んでいた。
それから数年後、まさか自分がキューバに本当に行けるとは思っていなかった。
キューバは今のところアメリカとの国交は断ったままだ。対米に閉鎖的な国でありながら、ヨーロッパへの門戸は開いており、観光客は圧倒的にヨーロピアンばかり、ついで同じ共産圏の中国人が多い。日本人観光客もたまに見かけるがほとんど団体ツアーだ。ツアーになってしまうのも仕方ない。まずキューバの観光情報が少ない、ホテルも取りにくい(安宿がない)。
アメリカから経済制裁を受けて物資は足りない、米は配給制、噂によると野菜はすべてオーガニック、なぜなら化学肥料や農薬を買うお金がないから。
そんなキューバへ、いつものように先に航空券だけを取り旅程は後から考える。日本からだと深夜到着便しかないため、代理店経由で念のため空港−ホテルの往復のみ日本語が話せるガイドとドライバーをつけた。到着早々車内でキューバ音楽について聞いてみる。
日本人観光客は圧倒的にゲバラファンが多く(そもそもキューバではゲバラは昔ほど人気ないらしい)、私のようにキューバに音楽を聴きに来た輩はレアらしい。そんな日本人が新鮮だったようで、日本留学経験もあるガイドも嬉しそうにキューバの音楽事情を話してくれた。
キューバ音楽といえば「サルサ」。圧倒的にサルサらしい。キューバ人の心だそうだ。学校での必修楽器はマラカス。子供のころからリズム楽器をやらせるところが、すでにキューバ国民のリズム感の底上げになっているようだ。
キューバは確かに貧しい。私も実際に米が配給されるところを目撃した。だが、音楽教育は非常に熱心らしく、流しのミュージシャンたちも音大卒がほとんどだそうだ。どおりで皆、演奏が異様に上手いわけだ。
さて、観光に目を向けると…観光客が必ず歩くのがこのオビスポ通り(左)。レストランに入れば窓際に流しミュージシャンがやってきて演奏してくれる。リクエストにも応えてくれるが、お願いするならもちろんチップが必要。ラム酒ミュージアムの片隅でも当然のように生演奏を演っている(右)。
暑さにそろそろバテてきて、良い音色に惹かれて入ったオビスポ通り沿いのBar。Jazzの生演奏を演っていた。観光客向けのエリアとはいえ、これだけ狭い範囲でライブが聴ける街はそうないだろう。
ホテルに戻ると、ラウンジでも流しが生演奏をしてくれる。してくれるというより、くっついてくる。もちろんチップのために。
ボーカルのど迫力の声量、ギターのおじさんの超絶技巧。鎖国が故に、へたな今時の音楽に汚染されずにそのままのキューバ音楽が保たれてきたのではないか、一国だけでこれだけハイ・クオリティーの音楽を演ってしまうのは、やはりDNAがなせる技なのかと日本人的には諦めざるを得ない部分も感じてしまうほど。
キューバンサルサ曲が多いのだが、リクエストなんでもOKとのことなので、ボサノバ曲をお願いしてみた。やっぱりど迫力(笑)。結局最後には彼らのCDを買うはめになった。これもご愛嬌ということで。
キューバに来たからにはブエナビスタ・ソシアル・クラブの演奏聴きたくなるのが心情。運良くホテルに置いてあったフライヤーに「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」の文字が!ホテルから徒歩圏内のカフェ・タベルナで今夜演奏があるらしい。何はともあれ慌ててカフェ・タベルナへ行き、席があるかどうか確認。いとも簡単に予約できた。食事とアルコール1杯、ミュージックチャージ込みで5000円程度。日本から代理店経由でチケットを取ったら、おそらく3倍くらいの価格だったのではないだろうか。
しかも当日チケットにもかかわらず、一番前の特等席。団体観光客しかいない中、一人だけなんて珍しいから、一番前にしてくれたのだろう。ここが一人旅のいいところ。
ブエナビスタ・ソシアル・クラブはメンバーが入れ替わり制(高齢で亡くなっているというのが現状か?)なうえ、ライブのフライヤー等もなかったのでミュージシャンたちの名前まで把握できなかった。
ライブが観光客向けとはいえ、当たり前だが演奏はすごい。ボーカルのおじいちゃんは激しさはないが絶妙なリズム感で格好良くステップを踏んでいる。お約束の「チャン・チャン」となると観光客も大盛り上がり。途中から美男美女・スタイル抜群のダンサーがサルサを踊っていた。