コンクリートジャングル……ってイメージの東京ですが、ほんの150年前まで、運河と川が交通と輸送の主役、水の街でした。今トライする“ちょっとそこまでの舟散歩”は、初めての東京の姿を垣間見せてくれます。遠出する羽田線や横浜線も国交省の旗振りで登場。2015年に始まった舟運実験だそうです。東京五輪・パラリンピック開催に向けて、“水際から街を元気にする取り組み”の一つです。
江戸城石垣を巡る歴史散歩や飛行機の離発着をまじかに見る羽田線など、バリエーションも豊富にラインナップ。川面を渡る風を感じる、気軽な“舟のお散歩”。このゆるり感、一度お試しいただけると幸いです。
隅田川の花火大会や、冬の天ぷら屋形船など、時々見かけた川の観光船。それをもう少し気軽にとか、周遊ルートとかで“舟の散歩”を楽しめないか、と始まったのが、国交省旗振りの“舟運実験”です。
何やらお堅いネーミングですが、昔からある秋葉原の万世橋船着き場や、各自治体の防災船着場なども使って、今までにないルートの“舟の散歩”ルートができないかな、という取り組みです。
ルートも多彩で、秋葉原~羽田空港、横浜~羽田空港、都内の日本橋から水道橋とか、5~30人乗りの船で観光です。各社ガイドが腕を競って、歴史あり、浮世絵スポット紹介あり、軽食付きありと盛りだくさんな内容に。
普通は自治体を超える公共交通は、認可が何とかで、安全のために難しいのですが、そこは国土交通省。民間と地方自治体の協力をいただいて、実現にこぎ着けてくれました。
2016年6月の実証実験のコースに乗船してみました。ガレオン社の実験コースで、日本橋船着場をスタートに、日本橋川⇒神田川上流へ⇒お茶の水分水路(折返し)⇒神田川下流へ⇒市兵衛河岸船着場で下船です。水道橋駅のすぐ近くまで行ったことになります。所要時間は45分ほどでしたが、沿岸は見どころ満載でした。
びっくりしたのは、公共交通なのに、ディズニーランドのジャングルクルーズばりに見どころでは船を留めてじっくり見せてもらえること。写真愛好家にも嬉しいサービスですね。思う存分シャッターを切れます。
川面をわたる風が涼しくて、高速道路の影も多く、とっても快適でした。日常とは全く別の、車の道とは流れる時間が違うのではと感じるくらいの、ゆったりとした船旅でした。
日本橋から水道橋は高速道路の下をくぐり、数え切れない橋の下を渡っていきます。
羽田~秋葉原線や、横浜線はまた違った表情です。広い海を渡って行ったり、工場群を突っ切ったりする水路、羽田の旅客機の離発着をまじかに見られる非日常コースもあるそうです。
この実験、もともとの起こりは2015年5月の神田祭で、12年ぶりの“神輿の船渡御(ふなとぎょ)”を見て『この賑わいを、放っておくのはもったいない』と思った国土交通省の方の発案です。
当日は、いつも閉ざされている東京・秋葉原の万世橋下流左岸の船着き場に、真っ白い装束の神主と、そろいの法被に地下足袋の氏子が乗った、神田明神の神輿を載せた船が静々と進んできて横付けに。この、船に乗った神輿が隅田川から神田川へ渡る儀式に、多くの人が万世橋に鈴なりになって、色めき立ったそうです。
万世橋船着き場は、1930年の橋完成時からあり、水運が中心だった当時は盛んに利用されていました。昨年からの舟運実験では、キーポイントとなっています。
都内だけでなく、多くの自治体は「防災船着場」を持っています。阪神淡路大震災の時に、道路を補完して大量輸送するのに水運が使われてから整備したそうです。普段使わないといざという時に使うのは難しいもの。訪日観光客のおもてなしと共に、防災船着場活用も密かな狙いの一つといえるでしょう。
2016年10月から、秋の舟運実験が始まりました。「舟で出かけてみようかな」と思ったら、各社盛りだくさんのコースを設定しています(データをご参照ください)。
定期運航が実現して、舟がバス感覚に
【データ】
ミニ屋形船や、川のエレベーター運河ツアーの㈱ガレオン: TEL 03-5858-6877
多彩なコースあり!東京都心と羽田空港等を結ぶ舟運社会実験(第4次実験)に参加してみませんか!(国土交通省総合政策局)
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo03_hh_000138.html