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遠州袋井の古刹をめぐる1泊2日の「こころ修行」

ストレスまみれの日常生活から自分を解放したい 定年後の人生をもう一度考えたい
阿修羅展で盛り上がった仏像ブームの延長なのか
老若男女を問わず仏教への関心が高まっている
寺巡りの参拝者から一歩踏み込んで修行という精神世界へ
非日常の仏教体験は疲れたこころを癒してくれる処方箋かも

まさに大人の社会見学   Photo=佐々木龍

作務衣に着替えて非日常の仏教修行を体験する

静岡県袋井市は東海道五十三次のちょうとまん中となる27番目の袋井宿のある町。
周辺には「遠州三山」といわれる法多山・尊永寺や萬松山・可睡斎、医王山・油山寺をはじめ
歴史のある寺や神社が数多く点在し、その昔は門前町としても栄えた。

そんな古い宿場町で古刹をめぐりながら仏教体験ができるツアーが話題になっている。
「三日坊さんの旅」は三日坊主といわれるほど厳しい禅寺修行を1泊2日で体験する。

市内にある5つの禅寺をまわり、般若心経を読んだり、坐禅、写経、
滝行といった修行僧の日常生活を体験するほか、
国宝級の仏像などを住職自らの解説を聞きながら鑑賞する。

袋井山 観福寺(ふくろいざん・かんぷくじ)

793年天台法華宗の寺院として建立。「袋井」の地名発祥の寺。
母と子の縁と絆の寺としても知られ「へそ寺」とも呼ばれている

徳川家とも縁のある観福寺は東海道どまん中の「へそ寺」

作務衣に着替えて発心式に臨んだ参加者は、ここでまず般若心経の詠み方や参拝の作法を学ぶ

作務衣に着替えて発心式に臨んだ参加者は、ここでまず般若心経の詠み方や参拝の作法を学ぶ

「梅湯(ばいとう)」は箸に挟んだ梅干を砂糖湯に溶かして飲む

仏像や天井絵を見ながら、その歴史、作者、技法、形の意味などを学ぶ

袋井山 観福寺(ふくろいざん・かんぷくじ)

住:静岡県袋井市袋井186-1
電:0538-42-4050
境内拝観約20分~

夜9時就寝、朝5時起床。朝夕の坐禅や廊下拭きの作務は修行僧と同じ。
寝具の上げ下げから食事の作法まで、わずか24時間の集団生活だがすべてが非日常体験の連続だ。
参加者は20代から60代の男女と幅広く動機もさまざま。出家するほどの覚悟はなくても、
仏教の奥深い世界に触れ、こころ新たな気持ちになれると参加者たちには好評だ。
ちなみに食事は野菜中心の精進料理だが食材と味は懐石料理並みで、これも体験ツアーのお楽しみになっている。

安養山 西楽寺(あんようざん・さいらくじ)

724年聖武天皇の勅願により行基が開いたとされる真言宗の寺。
寺領と格式は高く、今川義元、豊臣秀吉、徳川家康からも保護された

秋葉総本殿であり、江戸時代から火防の寺として知られる

夕食後と朝食前に約1時間の坐禅修行。凛とした空気の中、半目で姿勢を整え、呼吸を整え、こころを整える。実際には坐禅堂(写真)ではなく本堂で行う

可睡斎の精進料理は旬の地元食材を取り入れた多彩なメニュー

翌日朝食後は廊下拭きの作務。「動く坐禅」ともいわれこころの塵や埃を払う気持ちで臨む

可睡斎で最も清潔な東司(とうす=トイレ)。入るときと出るときには合掌低頭をする

ご本尊は平安時代に造られた阿弥陀如来座像。貴重な仏像を眼前で鑑賞できる

安養山 西楽寺(あんようざん・さいらくじ)

住:静岡県袋井市春岡384
電:0538-48-6754
境内拝観約30分~

般若心経を「唱え」「写して」疲れたこころをリセット

修行に使われるのは遠州三山を含めてほとんどが1300年の歴史をもつ古刹。

最初に発心式で寺での礼儀作法を学び般若心経を読経。
その後、可睡斎では夜と翌朝2回の「坐禅」を約1時間、
2日目の油山寺では「写経」を約1時間。
宗派ごとに作法は異なるがいずれも住職がていねいに指導してくれる。

修行のハイライトは油山寺「滝行」で、冷たい霊水に当たりながら合掌し一心に経を唱える。
大切なのはただひたすら唱えることだという。
水から入滝まで10分程度だが真冬のこの時期は身が引き締まる思いだ。

修行の中ではお茶を淹れるこころも学ぶ。お茶は仏教とは縁の深い飲み物。
地元「ふくろい茶」の美味しいお茶も堪能できる。

締めくくりは全員が修行で学んだ「こころの書」を清書して発表。
漢字一文字に参加者の正直な気持ちが表れる。
参加者のひとりが「人生の漢方薬ですね。明日から元気になれる」と語った。

医王山 油山寺(いおうさん・ゆさんじ)

701年に行基が万民和楽・無病息災を祈念して創建した真言宗の寺。
ご本尊は薬師如来。目の守護、眼病平癒にご利益があることで人気

袋井では最も古い寺。3年毎に開催する「大念珠祭」も有名

「るりの滝」で全員が大声で経を合唱。滝に打たれる時間はわずかでも、薄着の白装束で水は足の感覚が麻痺するくらい冷たい

写経は般若心経をこころを込めて書写する仏教修行のひとつ

 

医王山 油山寺(いおうさん・ゆさんじ)

住:静岡県袋井市村松1番地
電:0538-42-3633
境内拝観約60分~
http://www2.wbs.ne.jp/~yusanji/

法多山 尊永寺(はったさん・そんえいじ)

725年聖武天皇の勅命により行基によって創建された高野山真言宗の寺。
厄除け観音として知られ、初詣には多くの参拝客が訪れる

1983年に再建された本堂。本堂までは長い階段を上っていく

2日間の修行で学んだことを一文字の書で表現し全員の前で発表する

 

最後の修行寺である法多山・尊永寺では全員に修了証書が手渡される

修行した寺の御朱印を記した色紙も三日坊さんの旅ならではの土産

法多山 尊永寺(はったさん・そんえいじ)

住:静岡県袋井市豊沢2777
電:0538-43-3601
境内拝観約60分~
http://www.hattasan.or.jp/

三日坊さんの旅

メインは1泊2日の基本コース。
基本といっても内容は濃く、修行体験の他にも寺子屋体験、仏像鑑賞まで盛り沢山。
募集定員は15名~20名で予約が必要。リピーター向けの2泊3日や寺ごとの半日コースもある。

問合せは袋井市観光協会「三日坊さんの旅」係りまで。
TEL:0538-43-1006 FAX:0538-44-3189 http://www.fukuroi-hot-navi.jp/

たまごふわふわ

たまごふわふわ350円

江戸時代の古文書に登場し、日本最古のたまご料理として注目されている袋井の名物。
だし汁の上に泡状に攪拌したたまごをのせて食べるシンプルな料理で、ふわっとした食感が風味豊かでおいしい。
創作料理を含め、寿司店他市内各店舗で味わえる。

「山梨屋 寿司店」
住:静岡県袋井市高尾町24-9
電:0538-42-2422
営:11:00~14:00/17:00~20:00(ラストオーダー)
休:水曜


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