世界地図を広げてふとスカンジナビア半島に目をやると、普段「北欧」と一括りにしている地域の地形が意外に複雑で多様であることに驚く。国境線などの地理情報の自分の記憶がずいぶんいい加減で、勝手な思い込みも多かったことを知るのは情けない限りだ。そんな地図の中でひときわ気になるのがノルウェーである。フィヨルドの絶景やヴァイキングの歴史、そしてサーモンを始めとする海産物などの知識から、その国が海と共に生きる自然豊かな国であろうことは想像に難くないくが、目を凝らしてみると、スカンジナビア半島の外洋側はすべてノルウェー領ではないか。大西洋に望む西側だけでなく、北極海に面する半島最北部からロシア国境にも続く最北東部まで。なるほどこれが、ノルウェーが世界に名だたる海洋大国と呼ばれる所以か、などと一人感じ入りながら、はたと自分がその国内事情を具体的にほとんど知らないことに気付いたりもする。知らないのであればどんな土地か実際に確かめに行ってみたいと思うのが旅人の心意気というものである。と言うことで今回の目的地はスカンジナビア半島北部、ノルウェーの北極圏地方。目指すはヨーロッパ大陸最北の地。
世界地図を広げてふとスカンジナビア半島に目をやると、普段「北欧」と一括りにしている地域の地形が意外に複雑で多様であることに驚く。国境線などの地理情報の自分の記憶がずいぶんいい加減で、勝手な思い込みも多かったことを知るのは情けない限りだ。そんな地図の中でひときわ気になるのがノルウェーである。フィヨルドの絶景やヴァイキングの歴史、そしてサーモンを始めとする海産物などの知識から、その国が海と共に生きる自然豊かな国であろうことは想像に難くないくが、目を凝らしてみると、スカンジナビア半島の外洋側はすべてノルウェー領ではないか。大西洋に望む西側だけでなく、北極海に面する半島最北部からロシア国境にも続く最北東部まで。なるほどこれが、ノルウェーが世界に名だたる海洋大国と呼ばれる所以か、などと一人感じ入りながら、はたと自分がその国内事情を具体的にほとんど知らないことに気付いたりもする。知らないのであればどんな土地か実際に確かめに行ってみたいと思うのが旅人の心意気というものである。と言うことで今回の目的地はスカンジナビア半島北部、ノルウェーの北極圏地方。目指すはヨーロッパ大陸最北の地。
日本からノルウェーへは直行の定期便がなく、旅のスタート地点・首都オスロへはヨーロッパのいずれかの都市で乗り継ぎが必要になる。今回は時間と距離は余計にかかるももの、そのほかの利便性などを考慮してロンドン経由にした。
金曜の遅めの午後にロンドン・ヒースロー空港を出発したスカンジナビア航空のフライトはほぼ満席で、機内を見回すとオスロへ帰るノルウェー人が多いように感じる。フライトタイムは2時間10分なので、まさに週単位のコミュート(通勤)の距離であるとも言える。機内サービスは極めて質素でドリンクなどはすべて有料であることから、ヨーロッパ域内のビジネスシャトル的な雰囲気が強く漂う。そう考えるとここにいるのは平日にロンドンで仕事して週末にノルウェーの家族のもとに戻る切れ者のビジネスマンのようにも見えるが、それは旅の気分を高める勝手な想像である。そしてもう一つ印象的なのは、機内が大変静かなことだ。大声で話す人がいないどころか、ささやきさえもほとんど聞こえてこない。カップルやグループで搭乗している人もそれなりにいて、寝ている人はさほどいないのに、である。それはまるで日本の図書館級の静けさで、なんだか大人の雰囲気である。
オスロ国際空港に着いて驚いた。ターミナルビルのインテリアは北欧ノルディックスタイルのシンプルかつスタイリッシュなデザインを基本に、天然の木材が多用されている。入国のイミグレレーションホールも木製のフローリングが施されていて、見た目の美しさと温かみがあるだけでなく、足裏にはコンクリートにはない柔らかさえ感じる。そしてさらに、周囲の壁や床の自然の木からは「森の香り」が漂っているのである。それはまさに人に本能的な幸福感をもたらす匂いと言ったところだろうか。自然の木材を多用した空港ビルにはよく出会うが、館内がここまで自然の木の香りに包まれているのはオスロ国際空港が初めてである。いたく感激して入国管理官に「列で待つのが苦じゃなかったイミグレはここが初めて」と軽口を伝えると、「いいでしょ。最高の職場よ」と笑顔でウインクを返された。なかなか余裕の対応である。私は訪れた国を無条件で好きになるタイプの旅行者ではないが、今回ばかりは到着早々ノルウェーに二の腕を掴まれ、ぐっと引き寄せられたような気分だ。
* 首都オスロから北極圏最大都市トロムソへ
空港ホテルに一泊し、翌朝、国内線でさらに北に向かう。なんと言っても今回の旅の目的地は寒風吹きすさぶスカンジナビア半島北部の北極圏である。フライトの行き先はトロムソ(Tromsø)。人口は6万人程度だが北極圏では世界最大の都市だという。スカンジナビア航空の国内線の約2時間のフライトでは、フルサービスの食事が出た。ロンドンからの国際線の機内サービスがほぼLCCと同じスタイルだったのに対し、この国内線では充実のフルミールとドリンクが無料である。国内線により注力しているのか、それとも1日の中でも朝食が重要な土地柄なのか?そして8割方埋まっている機内は、またもや静寂そのものである。機内にはサービスを続けるクルーの声だけが静かに響く。少々謎めいた点もあるが、とりあえず不快なことは何もない。快適極まりない旅の朝である。