JRの無人駅の待合室のようなターミナルビルで、さてどうしたものかと思案していると、他の到着旅客はそれぞれ迎えのクルマや空港前に止めてあった自分のクルマで空港を離れていく。残されたのは私とさっきの機内で静かに雑誌を読んでいた20代前半と思わる女性だけだ。かなりの北欧美人である。公衆電話用のコインの両替を頼もうか、携帯を借りようかと思っていると、彼女の迎えの車が到着する。運転するのもまた驚くばかりのノルウェー美人である。すると旅客の美女が迎えの美女に何やら小声で話している。そしてこちらに向かって、街の中心部までクルマに乗せてくれると言ってくる。やはり誰もが寡黙だけど親切なのである。
すっかりいい気持ちで遠慮なくクルマに載せてもらう。車内で北欧美人2人に話を聞くと、この街・ホニングスヴォーグ出身の姉妹だという。姉はトロムソで働 いていたが、最近実家の近くで職を得たので引っ越してきた。フライトを共にした妹はトロムソで大学に通う学生だという。「この辺りは景色が最高。街の回り を歩くだけでもうほかのフィヨルドとか観光しなくていいんじゃない」と笑っていた。永遠に話を聞きたい気分だったが、小さな街なので5分ほどで目的のホテ ルに到着。姉妹は私を下ろすとまるで何もなかったような風情でさっさと立ち去った。寡黙で親切で美人なだけでなく、クールでもあるのだ。
予約なしに飛び込んだその中型ホテルでは部屋は確保できたどころか、他に宿泊客はいないと言われる。絵に描いたような観光地のシーズンオフである。そしてフロントの女性によるとノールカップへの交通手段は定期バスやツアーは毎日の運行はなく、その日と翌日だと値段のはる市中のタクシーを貸し切りるしか方法はないという。さてどうしたものかと思案しつつ、とりあえず街に出てみる。
ホニングスヴォーグは人口が2000人余の小さな街だ。切り立った山々と海の間の斜面とわずかな平地にへばりつくように家が並んでいる。しかし昔も今もスカンジナビア半島最北部の漁業の拠点で、夏場はノールカップへ向かう観光の拠点として世界中の大型のクルーズ船が寄港する。商店がぽつぽつと並ぶ短いメインストリートに比べると、港や桟橋が立派なのはそのためである。
坂の多い街を散策していると建物が落ち着いた明るさの色鮮やかな北欧デザインであることに改めて気付く。フィヨルドと北極海の一部である荒れたバレンツ海を望み、秋には正午でも日本の早朝や夕刻のような陽の高さしかなく、冬には太陽が昇らないこの土地だからこそ、人々が自然にそのような色鮮やかさを日常に求め大切にしているのかもしれない。雲が切れ僅かな日差しと青空が顔を出すと、街の人たちが一斉にさっそうと笑顔で散歩に出かけていたのが印象的だった。
そんな街を一巡して港に降りると、ここが「ノルウェー沿岸急行船(フッティールーテン、Hurtigruten)」の主要な寄港地であるこが分かる。ノルウェーの沿岸約2,500キロを12日間かけて往復する定期運送船で、南部の古都ベルゲン(Bergen)から半島最北東部のキルケネス(Kirkenes)まで、片道計34ヶ所の港に寄る。100年以上の歴史があり「世界で最も美しい船旅」と言われている。そうか、この船に乗れば、この先さらにスカンジナビア半島とノルウェーの最北東部にまで行けるではないか。旅程は臨機応変が大切である、と自分に言い聞かせながら、タクシーの手配さえ難しいノールカップは諦め、急きょ翌日からの船旅を決める。
JRの無人駅の待合室のようなターミナルビルで、さてどうしたものかと思案していると、他の到着旅客はそれぞれ迎えのクルマや空港前に止めてあった自分のクルマで空港を離れていく。残されたのは私とさっきの機内で静かに雑誌を読んでいた20代前半と思わる女性だけだ。かなりの北欧美人である。公衆電話用のコインの両替を頼もうか、携帯を借りようかと思っていると、彼女の迎えの車が到着する。運転するのもまた驚くばかりのノルウェー美人である。すると旅客の美女が迎えの美女に何やら小声で話している。そしてこちらに向かって、街の中心部までクルマに乗せてくれると言ってくる。やはり誰もが寡黙だけど親切なのである。
すっかりいい気持ちで遠慮なくクルマに載せてもらう。車内で北欧美人2人に話を聞くと、この街・ホニングスヴォーグ出身の姉妹だという。姉はトロムソで働 いていたが、最近実家の近くで職を得たので引っ越してきた。フライトを共にした妹はトロムソで大学に通う学生だという。「この辺りは景色が最高。街の回り を歩くだけでもうほかのフィヨルドとか観光しなくていいんじゃない」と笑っていた。永遠に話を聞きたい気分だったが、小さな街なので5分ほどで目的のホテ ルに到着。姉妹は私を下ろすとまるで何もなかったような風情でさっさと立ち去った。寡黙で親切で美人なだけでなく、クールでもあるのだ。
予約なしに飛び込んだその中型ホテルでは部屋は確保できたどころか、他に宿泊客はいないと言われる。絵に描いたような観光地のシーズンオフである。そしてフロントの女性によるとノールカップへの交通手段は定期バスやツアーは毎日の運行はなく、その日と翌日だと値段のはる市中のタクシーを貸し切りるしか方法はないという。さてどうしたものかと思案しつつ、とりあえず街に出てみる。
ホニングスヴォーグは人口が2000人余の小さな街だ。切り立った山々と海の間の斜面とわずかな平地にへばりつくように家が並んでいる。しかし昔も今もスカンジナビア半島最北部の漁業の拠点で、夏場はノールカップへ向かう観光の拠点として世界中の大型のクルーズ船が寄港する。商店がぽつぽつと並ぶ短いメインストリートに比べると、港や桟橋が立派なのはそのためである。
坂の多い街を散策していると建物が落ち着いた明るさの色鮮やかな北欧デザインであることに改めて気付く。フィヨルドと北極海の一部である荒れたバレンツ海を望み、秋には正午でも日本の早朝や夕刻のような陽の高さしかなく、冬には太陽が昇らないこの土地だからこそ、人々が自然にそのような色鮮やかさを日常に求め大切にしているのかもしれない。雲が切れ僅かな日差しと青空が顔を出すと、街の人たちが一斉にさっそうと笑顔で散歩に出かけていたのが印象的だった。
そんな街を一巡して港に降りると、ここが「ノルウェー沿岸急行船(フッティールーテン、Hurtigruten)」の主要な寄港地であるこが分かる。ノルウェーの沿岸約2,500キロを12日間かけて往復する定期運送船で、南部の古都ベルゲン(Bergen)から半島最北東部のキルケネス(Kirkenes)まで、片道計34ヶ所の港に寄る。100年以上の歴史があり「世界で最も美しい船旅」と言われている。そうか、この船に乗れば、この先さらにスカンジナビア半島とノルウェーの最北東部にまで行けるではないか。旅程は臨機応変が大切である、と自分に言い聞かせながら、タクシーの手配さえ難しいノールカップは諦め、急きょ翌日からの船旅を決める。